2018年1月31日水曜日

台湾 林本源園邸

   旅の達人に「台湾の魅力は?」と聞くとたいてい「安くておいしい食べ物」「あたたかい気候と南国の自然」「日本人に親切な人柄」という答えが返ってきます。でも僕のように建築をスケッチしたくて訪れるものには台湾(特に台北)はかなり近代的な町で一見すると異国情緒に欠け、ちょっと不満が残ります。
特に違和感があるのがいわゆる「古民家」らしきものがほとんど残っていないことです。理由は良くわかりませんが、どうも日本軍が第二次大戦後引き上げた直後の共産党と国民党の内乱による町の混乱が文化的な資産の喪失に繋がったような気がします。
それでもガイドブックで調べると台湾5大富豪の邸宅跡だという「林本源園邸」がどうも古民家に近いものと知って出かけました。中国の富豪の生活を垣間見ることができると期待したのですが、残念ながら大半が保存改修中。体験できるのは庭園とそれに隣接する一部の建物のみ、母屋とそれに付帯する建物は見ることさえできませんでした。確かに池を生かした江南式庭園は見応えがありますが、個人的には山や川の造形がわざとらしく感じられ、スケッチする気になれませんでした。でもせっかく訪れたのだからと、さんざん歩き回って一番「邸宅」らしさを感じたのがこのスケッチです。
石と漆喰の塀、奇妙な形ののぞき窓、レンガを積んだ門の3点セットはとても中国的です。以前にこのブログに載せた角館(かくのだて)の武家屋敷にある黒い板塀、丹精な格子窓、銅版屋根と冠木門の3点セットと比較してみればその違いは一目瞭然です。文化の違いはこんなささやかな道のたたずまいにも現れるのですね