2012年1月29日日曜日

吹屋小学校

岡山県高梁市に吹屋(ふきや)という村があります。
JRの備中高梁駅からバスで1時間以上揺られてやっと到着という、とんでもない田舎です。
しかしこんな僻地にもちゃんと建築の文化がありました。
この「吹屋小学校は明治33年に建てられた木造校舎。
「べんがら」と「銅山」で栄えたこの町の全盛期に建てられただけあって小学校には珍しく玄関を中心とした左右対称の堂々とした構えをしています。
窓はモダンで大きな格子窓。デザインにもこだわりが見られます。

この日は、休日のせいか子供たちの姿はありません。
でも近づくと掲示板にはちゃんと「運動会のお知らせ」の張り紙が・・・
そう、この建物は現役として使用されている日本最古の木造小学校だそうです。

2012年1月22日日曜日

奈良国立博物館本館

毎年NHK日曜美術館で紹介する「正倉院展」。
日本人なら一度は行っておかねばと気負って出かけましたが、会期中最後の休日と言うこともあり、超満員。
入場まで1時間以上並び、お目当ての刀剣の前ではもう一度「並んでください!」とのこと・・・日本人を貫くのもなかなか大変です。
さて正倉院展は博物館の新館で行われていますが、スケッチするならもちろんこちらの「本館」がお勧めです。
明治27年竣工。設計は有名な宮廷建築家「片山東熊」です。彼にとっては、華やかなアーチも複雑なコリント式の丸柱もお手の物。明治の洋風建築として重要文化財に指定されています。
正倉院の御物から西洋建築の装飾まで・・・日本人の器用さには驚きます。

2012年1月15日日曜日

今井町 その3

今井町の中心は称念寺。
寺内町らしく、お寺と民家の両方を入れてスケッチしたいと、メインストリートである御堂筋を歩きました。
本堂は重要文化財に指定されていますが、残念ながら、現在改修中。
それではと、隣の「大鼓楼」に的を絞ってみると、うまい具合に、またしても三叉路が。そこから振り返って見ると、思ったとおり、小ぶりな屋根と花頭窓が、狭い路地の突き当たりに顔を出しています。
しかも背景は緑の森と青い空。
目の前にあるのはまさに江戸時代・・・。
でもここでは、完全なる現実でもあります。

2012年1月8日日曜日

今井町その2

今井町の発祥は戦国時代。一向宗徒による城塞都市でした。
従って通りは屈折し、わざと見通しを悪くし敵の侵入に備えたつくりになっています。
屋根上の煙出しがユニークなこの「河合家」(重要文化財)のある通りも突き当たりは三叉路でやはり視界は閉ざされ、町の向こうにある現実は見えません。
だから画面の内は本当に中世のまま・・・隣のビルや背景の高速道路をカットする必要も無く、400年の時間を素直にスケッチすることができました。

2012年1月1日日曜日

今井町その1

奈良今井町を30年ぶりに訪れました。
当時から「町並み保存」で有名だったとはいえ、ただの「古い民家」に興味を持つ人がそれほど多いはずも無く、人影はまばらで、ひっそりとした静かな町だったのを覚えています。
この建物は明治36年に建てられた奈良県初の社会教育施設で、長く今井町役場として使われていたようです。
実は前回の僕の記憶にこの建物がありません。玄関上にあるアーチ状の瓦屋根などユニークな意匠がその時もあったのかわかりませんが、1990年に復元され現在の姿になったようです。
今は観光拠点として使われ、町を訪れる人はまずここで案内図をもらい、説明を受け、散策にでかけるようです。

さて、ひさしぶりに訪れたこの町。団体客や外人の姿もちらほらと見え、観光客こそ増えたようですが、静かな町のイメージはまったく昔のまま。本当に30年も経ったの?と疑いたくなります。
しかしよく考えてみれば、「変わる」ことが町の発展だというのは僕等の単なる思い込み。
痛んだところは、新建材で作り変えれば、安く、早くできます。道も広く真っ直ぐにすれば車も入れます。
でも敢えてそれをせず、昔の様式を思い出し、より永く使い続ける・・・「変わらない」ことがこの町の誇りなのかもしれません。

追伸
いつもこのブログを読んでくれている皆さまへ
あけましておめでとうございます。
今日は2012年1月1日。
そしてこの美緑空間のスケッチと文もちょうど300件目になりました。
われながらよく続いていると思います。
建物と人がテーマなので、ブログに載せる新しい題材がだんだん減ってきています。
今年はもっと遠くまで足を伸ばすことともっと身近で魅力ある題材を探すことを心がけたいと思っています。
美緑(みりょく)的な話題をご存知の方、是非お知らせください。
暇を見つけて描きに行きたいと思っています。
どうか今後ともご愛読ください。