2009年11月29日日曜日

旧居留地15番館

先週に引き続き旧居留地を歩きましょう。
38番館から少し南東の交差点にこの「15番館」があります。
周りはの建物はすべて石やタイル、コンクリートで出来ていますが、この建物だけが木造の異人館風の佇まいで、少し違和感があります。
実は38番館など周辺の石造りの建物は古そうに見えますが皆、大正末期から昭和初期に建造されたもので、けっして居留地時代のものではなく、この15番館が唯一当時の生き証人なのです。
その機能は住宅ではなくアメリカ領事館・・・洋装の紳士淑女が出入りする映画のようなシーンが展開されたに違いありません。
ちなみに現在はウェディングも行う人気のレストラン。
やはり紳士淑女でにぎわっています。こんな形で建物が残ってゆくのも悪くない・・・・。

2009年11月22日日曜日

三都物語

少し前、「三都物語」なるJRのポスターをよく目にしました。
田舎の田園風景よりも都(みやこ)の面白さを味わおうというものらしい。
JRの狙いが当たったかどうか知りません。が、言われてみれば、このブログでここ数回取り上げたのはすべてそれらしき都ばかり。
大阪~奈良~京都と歩き、今回はまた神戸。
都市にふさわしいモチーフがあり、雰囲気があります。しかも神戸も京都も奈良も大阪からいずれも電車で30分程度で行けます。
全然性格の違う都市がこんなに密集している土地は日本広しと言えど、他にはありません。「住むなら関西に限る」と言った人の気持ちが良くわかります。

そんな訳で今日は「旧居留地38番館」。設計者は以前にも触れたあのヴォーリズです。珍しくギリシャ神殿風のデザインです。昔はナショナルシティ・オブ・ニューヨーク神戸支店、そして現在は大丸神戸店の別館として使われています。
よその大丸には無い神戸らしい雰囲気が旅行客に人気のようです。覗いてみると、この日も大賑わい・・・「三都物語」のキャンペーンはきっと大成功だったに違いありません。

2009年11月15日日曜日

平野神社

北野天満宮の帰り、すぐ近くの平野神社に寄りました。
実は、規模も小さく、本殿は奥に隠れてきっと見えないだろうし、たぶん絵にはならないだろう・・・と半分あきらめつつ、足を運んだのです。
ところが正面に立ってびっくり。
塀に遮られているので、建物の下半分はどうなっているかわかりません。でも面白いのはその上。
中央の門に対して左右対称に2棟づつセットになった4つの破風が並んでいます。
そして神社建築のシンボルでもあるいくつもの「千木」が鎮守の森を背景に、空に向かってリズミカルに交差する様が、独特の面白さを生み出しています。

家に帰って早速調べてみました。
伝統的な妻入の本殿に庇をつけたものが「春日造」、そしてこの平野神社のように、2棟ずつ4殿を連結したものを「比翼春日造」と呼ぶそうです。
神社と寺院のデザインが混ざり合っていく過程で誕生したとても珍しい形式だそうです。
実に勉強になりますね。
この歳になってもまだまだ学ぶことは多いようです。

2009年11月8日日曜日

北野天満宮

神社と言えば「神々しさ」がその身上。
普通の人が本殿に近づくことは許されません。伊勢神宮しかり。出雲大社しかり。
しかし同じ神社でも全国に1万以上あると言われる、「天満宮」はすこし趣を異にします。
祀ってあるのは神ではなく「人」である菅原道真公。
そのせいか、建物も「荘厳」「厳粛」というよりむしろ「品の良さ」「立派さ」を感じてしまいます。

この絵は京都の北野天満宮。
文献に依れば、本殿と拝殿を石の間でつなぐ「八棟造り」という形式の神社で、特徴的なのはその屋根です。
きれいな桧皮葺で、素材感は優しいのに、構成はダイナミックで、複雑に重なる屋根の造形は実にバランスがよく、まさに芸術的です。
そして柱、梁、屋根周りの金細工は密度が高く、どれも超一流の工芸品。

ありがたいのは、巷の「神々しい」神社と違って、この国宝のすばらしさをすぐそばまで近づいて観ることができることです。
さすが学問の神様!・・・探求心旺盛な者に優しいようです。

2009年11月1日日曜日

興福寺五重塔

秋空の奈良。
興福寺五重塔を描きに来きました。
観光用の絵葉書では、猿沢池から塔の上層部を見た構図が有名で僕も確か大学生のときにスケッチした覚えがあります。
しかし、今回の狙いは真近の全景です。というのも、僕が立っているこの場所に間もなく別の建物が復元される計画があり、このアングル、この全貌を見られるのはこれが最後かもしれないからです。

微妙な曲線、華麗な屋根が5層重なる様は美しく、しかも迫力があります。
向こうから外人の観光客が来ました。
塔を見上げ、彼らはいっせいに「OH・・・・!」
英語の苦手な僕にも彼らの感動は十二分に伝わりました。