2017年3月23日木曜日

チャイナドレスの人物を描く その3


 さて着彩です。今回のメインテーマであるチャイナドレスの色は鮮やかな赤。大切なことはいかにその艶やかさを表現するかということです。こういう時油絵は比較的容易です。一番上の層に明るい赤を塗ればそれで事足りるのですから。(油絵は簡単と言ってるわけではありませんよ。念のため。)
 でも(透明)水彩ではそうはいきません。どんなに上から派手な色を塗っても下の色より華やかになることはないし、一度暗くした部分はその上にどんな明るい色を塗ってもそれより明るくなることはありません。特に今回は全体的に鉛筆で明暗を施しているため、下地そのものが白くはありません。
 それではこのチャイナドレスをより鮮やかに、明るく見せるためにはどうしたらいいのでしょう?答えは「比較の効果」を使うこと。たとえば同じ色でも隣合う色が地味で、暗い色であればあればその色はより鮮やかに明るく見えるし、赤と緑のように補色の関係になっていればお互いを引き立ててくれます。
 ではさっそく試してみましょう。先に書いたように、陰の部分を一度濃くしすぎるとその周辺はそれより暗くすることしか出来ず全体が明暗の階調の少ない貧相な絵になってしまいます。失敗しないこつは最初は水を多めに色は薄くざっくりと調子を確認しながら塗ることです。
 具体的に説明しましょう。まず背景を全体的にドレスよりも暗くし、色味は赤の補色であるグリーン寄りに、かつ彩度を抑えたグレーで全体を統一します。足元の床材も、植栽も、川も森も生の絵の具は使いません。どこも赤、緑、青の絵の具を適度に混ぜて彩度と明度を落としています(色が濁るので黒と白の絵の具は使いません)。更に背景全体の色相は赤と補色の関係にあるグリーンを強くします。そして生のバーミリオンを使うのはチャイナドレスの一点だけに絞ります。こうすることによって透明水彩の薄い赤でも艶やかな赤に見えるのです。いかがですか?
今回で全体の色調は確認できました。ただちょっとまだ全体的に色味が薄く、存在感が希薄です。次回はフィニッシュまでのプロセスをお見せします。お楽しみに。


2017年3月12日日曜日

チャイナドレスの人物を描く その2


 前回アトリエで作成した鉛筆のデッサンを見ていただきました。いつもならすぐに水彩で着色をするのですが、今回はせっかくのチャイナドレス。この際背景も思いっきりチャイナらしく・・・とインターネットで(著作権の問題にならぬ範囲で)題材を探し、アレンジして、画面を再構成したのが今日の作品です。
 注意しなくてはいけないのは、目線レベルを合わせること。つまり僕が絵を描いている時の水平線と背景の画像の水平線がほぼ同じ位置に来るようにすることです。ただし実際に探してみると良くわかるのですが、今日の絵のように水平線が画面の上方ぎりぎりに設定してある構図の背景画像は少ないと思います。そのあたりは組み合わせのテクニックが必要です。皆さんも研究してみてください。
 ついでに人物も前回と比べるとちょっと修正しているのがわかりますか。ひとつは足先が画面からはみ出していたので、ちょっとつま先を曲げてもらい、画面に収まるようにしました。もうひとつはきりりとした顔の表情。前回はわざとぼかし気味に描いていたのですが、バックをここまで描きこむと、表情もはっきりと描かないとバランスが取れなくなったからです。
 これでやっと下書き完成です。次回はいよいよ着色です。