2016年3月27日日曜日

海外スケッチ旅行に出かけよう

 前回ちょっと予告しましたが、スペインへ7泊9日のスケッチ旅行に行ってきました。そこで今日から海外旅行でのスケッチを作品に仕上げるまでのプロセスを旅の感想を交えて記したいと思います。
 今海外旅行を準備している方、是非スケッチブックをかばんに入れてお出かけください。自撮りの写真では得られない思い出となりますよ。
 さてまずお勧めしたいのはゆったりした自分だけの旅程を作ること。と言いつつ実は今回は大失敗でした。飛行機もホテルも全てインターネットで自分の好きなように予約したのはいいのですが、7泊の間に欲張ってマドリード、グラナダ、セビリア、コルドバ、トレドと5都市を訪れる計画にしてしまいました。それも初日は夜の到着、最終日は早朝出発。
 えっ巷のツアーでは当たり前?そう、でもダメなのです。スケッチ旅行はなるべく宿泊ホテルを変えず、スケッチブックを片手に自由に歩けるようにするのが原則です。そうしないとゆったりと楽しんでスケッチすることができず、いい絵にもなりません。だから各都市最低2泊はしたいものです。
 今回は、特に英語が全くと言っていいほど通じない国スペインで、毎日知らない場所へ列車の時間を気にしつつ移動する必要があり、正直言って相当神経をすり減らしました。到着すると緊張感から開放されぐったり・・・絵を描く気分ではなくなってしまいます。とにかくスケジュール作りは慎重に。
 次は訪れる場所の選定。大事なのはガイドブックをあまり当てにしないこと。有名な石像の隣でVサイン・・・!。記念写真としては最高でしょうが、多分絵にはなりません。
 自分の足でベストなアングルを探し出しましょう。ちなみに今回の旅行中iPhoneで僕の歩いた距離を調べると、最大で1日に30km、最低で15km、1日平均約20km歩いていました。我ながらまだまだ若いなと安心した次第です。
 さて、初日夜到着して2日目はマドリードのスケッチ。ただプラド美術館はじっくり見たかったので午前中をスケッチに充てることに。あわただしく町中を歩き回りましたが描きたいと思うほどの風景は登場せず。「半日しかない」という焦りも手伝って、結局この日の成果はゼロ。
 スケッチに来てこんなことはあまり経験がないのですが、仕方ありません。次から次へと描きたい風景が現れたローマやフィレンツェやプラハに比べるとマドリードは視覚的な魅力はかなり落ちる気がします。
 そして翌日グラナダへ。午前中は列車とバスの移動時間でつぶれ、到着は午後。ホテルに荷物を預け、アルハンブラ宮殿を眺める丘があるというアルバイシンへ向かいます。迷路のような細い路地を抜け、サン・ニコラス展望台へ。
 噂にたがわぬ素晴らしい眺望です。宮殿の雄姿を全部納めようと、迷わず大きなスケッチブック(F6)を取り出しました。が、残念ながら無料の展望台は観光客でぎっしり。とてもスケッチブックを広げ独り占めできるスペースはありません。しかもマドリードで30kmも歩いた疲れがあり、何とか座ってゆっくり描ける場所をと探し回り、見つけたのがここ、レストランのソファー席。
 
 優雅に、ビールを飲みながら美しい風景をスケッチする・・・これぞスケッチ旅行!最高の気分でした。
 ここでいくつかのアドバイスを。ご覧のように画面は白黒の線だけ。本当は現地で色も塗るのが一番いいのですが、海外旅行はどうしても時間が惜しい。そこで僕はペン描きが完成したところでいったん終え、写真を撮っておいて日本に帰ってから塗ることにしています。
 もうひとつ、ペンはお気に入りの物を必ず2本以上準備しておくこと。アクシデントがあると、現地(の観光地)では絵画用のペンは入手できません。実は今回も持って行った1本に不具合があり、途中で新しいペンに交換しました。もし予備のペンを準備していなければ危うくこの日も「成果なし」になるところでした。
 来週はこのスケッチに水彩で色をつけてゆきます。お楽しみに。

2016年3月13日日曜日

手描きのスケッチとパソコンで絵を描こう その4

1図
2図



 いよいよ今週は「手描きのスケッチとパソコンで絵を描こう」最終回です。どうぞ残りのテクニックを存分にマスターしてください。
ちょっと先週の復習です。海を表現するのに必要な4つのレイアーの一番下は「海色レイアー」。2番目が海の「うねりレイアー」でしたね。これを下図のイエローグレーに重ね、うねりにレイアーマスクをかけて出来たのが先週まででした。(2図)これと完成図(1図)はどこが違うのでしょうか?それが今日のテーマです。
 ポイントは2つあります。ひとつは水面にさざなみの表情がついていること、もうひとつは海の色がまばゆい南国色になっていることです。
 これをペンツールでいきなり描くのが困難なことはもう皆さんも想像がつきますよね。実はパソコンならではの楽なやり方があります。それを教えましょう。
 まずさざなみの表現について。これはフォトショップの「フィルタ」機能を使います。前回は「雲模様」を利用した画像から「海の波紋」フィルタを使いました。今回は同じく「雲模様」から作成した画像に「表現手法」の中にある「輪郭検出」フィルタをかけます。すると雲模様のエッジが縁取られて黒いさざなみのような模様が現れます。このままだと黒い波になってしまうので、さらに「色調補正」の「階調の反転」コマンドを使うと3図ができます。
4図
3図
このままでは絵にならないので海のうねりのときと同様に「遠近法」でぐっと縮めて手前を引き伸ばし、水平線を合わせたのが4図です。だいぶさざなみらしくなってきましたね。
 この画像を先週作成した2図に透明度70%で重ねます。すると5図のようになります。海の色が消えてしまいました。先週の「うねりレイアー」を重ねたときと同じ現象が起きています。つまり汚いグレーがが混色されてしまったのです。
 ですから今回も同じように「波のうねり」画像をそのままレイヤーマスク画像にコピーしてグレーの階調を透明度の階調に置き換えてやります。そして画像モードをやはり「オーバーレイ」にして海色の色彩を強調します。(6図)

5図
6図
これでほとんど完成ですが、でもまだちょっと物足りません。もう少し海の色に明るい南国らしい変化をつけたいのです。
 そこで最後のレイアー「水中反射」を作ります。今回は手前から水平線にかけてブルーグリーンのグラデーションで「水中反射」画像を作って見ました。(7図)
 このレイアーを「さざなみレイアー」の下、「うねりレイアー」の上にオーバーレイモードで入れます。こうして出来た最終のレイアー構成が8図です。すべての透明度を最終的に気に入るまでいじって出来たのが1図の完成図というわけです。
 これで僕のマル秘テクニックは全部教えてしまいました。いかがでしたか?なお疑問のある方はいつでもご連絡を。紙面の都合で省略したさらに細かな要領を教えますよ。
7図

8図




今回のパソコン画は実はこのブログの読者であり、友人であり、辛口の批評家であるK氏が「他の水彩画より気に入った!」といって購入してくれました。
 「手描き」の良さにこだわる僕としては、ちょっと複雑な気分ではありましたが、よく考えれば「誰もが手軽に自宅に絵を飾る」という僕の活動目的には、安価で、スピーディーに描けるこの手法は悪くないと気づかせてくれました。
 というわけで、EーSHOP美緑空間では今後このようなCGも増やしていきたいと思います。複数プリントを前提とする作品は価格的にもさらに提供しやすくなると思っています。ご意見ご要望があればお寄せください。
 
追伸
来週からしばらくスケッチ旅行に出かけます。それゆえ、このブログも少しお休みするかもしれません。そのときはお許しを。

2016年3月5日土曜日

手描きのスケッチとパソコンで絵を描こう その3




 読者の皆様へ。お待たせしました。実は今回の内容はとてもマニアックなので内心、あまり見てもらえないかと覚悟していたのですが、ありがたいことに予想は大外れ。
  最近にないアクセス数があり、大いに執筆意欲をかきたてられています。
 フェイスブックに「マル秘テクニック」と銘打ちコマーシャルしたのが効いたのかもしれません。ありがとうございます。

 さて改めて、1番目の図が完成作品。そして今日のテーマは海の表現です。
 波のうねり、海の色の変化、さざなみときらめく光・・・こんな要素を表現するにはどうしたらいいのでしょうか。ここでもレイアーの使い方がポイントになります。
 実は海だけで4つのレイアーを使っています。順に説明してゆきます。
 



 まず「海色レイアー」。ご存知の通り、海はけっして青一色ではありえません。ここでは手前がグリーン、水平線に近くなるほど青っぽくしています。透明度70%で下地のイエローグレーを生かしながら、手前をグリーン、水平線をブルーにしてグラデーションをかけたところです。(2番目の図)









 

  波が静かな湖ならばこのままでもよさそうですね。でもここはハワイ。サーフィンで有名なだけあって水底の起伏や湾の地形や風によって水面に大きなうねりが生じています。これを「水のうねりレイアー」に表現します。
 ここからはちょっと手間がかかります。覚悟してください。まず「うねり」は水面の光と影で表現されます。これを海の色で直接描きあげるのは複雑すぎてきっと挫折します。ではどうすればいいでしょう?
 答えは白黒で海部分のうねりを単純に表現した「水のうねりレイアー」を作り「海色レイアーに重ねればいいのです。
 うねりの光と影の空間を白黒で滑らかに表現するには太いペンとぼかしを使うよりもフォトショップのフィルタ機能「雲模様」コマンドを使うほうが簡単かつ美しい。(3番目の図)
 







  えっ?波に見えない?さっきより悪くなった?大丈夫。心配要りません。次にこのうねりレイアーにフィルタ「海の波紋」コマンドを実行してください。(4番目の図)
  どうです?だいぶ波に見えてきたでしょう?














 
 


 でもまだちょっと変・・・。そう遠近感が無いのです。そこでフォトショップのツールメニューから(編集)→(変形)→(遠近法)を選んでください。
 海部分の画像にハンドルがついていますね。そのハンドルをつかんで手前を広げ、奥を狭めます。あとは水平線をきちんと合わせればご覧の通り。(5番目の図)かなりリアルな海になってきました。
 でもこの「水のうねり」レイアーは透明度80%にしていますが、ご覧の通りグレーが勝ちすぎてほとんど下の「海色レイアーが見えてきません。どうすればいいのでしょう。
 透明度を上げればいいって?残念。透明度を上げれば確かに徐々に青っぽくなるのですが、所詮はグレーが上に乗っているので濁った海色にしかならないのです。










 どうすればいいのでしょう。白いところはそのまま透明度80%で重ねて問題ありません。問題はグレーの部分。グレーが濃くなるに従い、「海レイアー」の青が見えるようにすることです。
 これを実現するためにには「レイアーマスク」という機能を使います。レイアーのツールボックスの今描いている「うねり」レイアーを選択し、ツールメニューの(レイアー)→(レイアーマスクを追加)コマンドを選ぶとうねりの通常のレイアーアイコンの横にもうひとつ真っ白なレイアーマスクアイコンが作成されます。
 次にその真っ白なアイコンをALTキーを押しながらクリックすると画面がレイアーマスク作成画面になります。
 レイアーマスクとはそのレイアー(うねりレイアー)の画像をそのまま残す部分は白で、見せない(透明になる)部分を黒で、中間をグレーで塗りつぶしたレイアーです。
 以上の機能を良く考えてみると白黒のうねりレイアーをそのままレイアーマスクの画像にコピーすればいいことがわかります。(6番目の図)
 つまりうねり画像の白いところは透明度80%でそのまま見え、暗くなるにしたがって下の海色レイアーの画像が透けて見えることになるのです。
 こうすればグレーに汚されること無く青い海色が画面に現れてきます。(7番目の図)
 やっと青い海がよみがえりました。このレイアーマスクを使いこなせるようになると、あなたもプロ並みです。













でもハワイの海にしては、まだちょっと華やかさに欠けます。もっとメリハリをつけたいですよね。そこで今度はレイアーボックスの上方にある「描画モード」を使います。今まではすべて「通常」モード。それを「オーバーレイ」モードに切り替えます。すると「うねりレイアー」の明るい部分は「海色レイアー」の青をさらに明るく、暗い部分はより深い青に変化させてくれます。
 そうして出来たのが8番目の図です。かなり1番目の完成図に近づいてきました。
 でもまだまだ・・・。まず水色に華やかさが足りません。それにさざなみがまったく描けていません。
 残念ながら、またまた長くなってしまったので今週はここまで。続きは来週にします。
 
追伸
 心ある友人がこのブログをみてあんなノウハウを教えていいの?お金をもらったら?と忠告をしてくれました。
 でもご安心ください。無料ですよ。