2016年9月4日日曜日

肌色再考






















 人物画で大切なのは「表情」。これは以前に述べたとおり。でもそのためにはきれいな肌色を表現しなくてはなりません。今日はその「肌色」の表現を考えます。
 今回のモデルさんは色白の美人。まさに今日のテーマにふさわしい。本来は立ちポーズなので全身を描くべきだったのですが、上半身のみ、敢えて顔にこだわってみました。
 人物画の肌色をどうやって描くか・・・実はこれは世界中の有名な画家が悩んだテーマでもあります。藤田嗣治は自分で探した鉱物を絵の具に混ぜた下塗りの上に特殊な油で溶いたうすい白を重ね、あの有名な「乳白色の肌」を創り出したとか。
油絵ではそんなテクニックが可能ですが、残念ながら透明水彩ではそうはいきません。基本的にはやり直しが利かない真剣勝負。以下に僕なりの工夫を公開しましょう。
 市販の絵の具に何故か「肌色」はありません。(あればこんな功労はいらないのですが)だから自分なりに色を混ぜて作るしかありません。実は昔はイエローオーカー(黄土色)と白を混ぜて作っていました。でもこの方法は男性なら良いのですが黄ばみすぎていてどうしても女性の肌向きではありません。そこで最近は赤(パーマネントローズ)と黄(ウインザーイエロー)を混ぜた肌色を明部に暗い赤(パーマネントアリザリンクリムソン )と黄(カドミウムイエローディープ)を混ぜた肌色を暗部に使用しています。
 いつもは鉛筆による明暗の上にこの2色の肌色を重ねるだけなのですが、今回はより肌色にこだわってより細かなテクニックを使っています。
 今回はモデルさんはとても色白。そこでまずいつもより赤色の配分を若干多めにします。 そして拡大図を見てください。実は全体の顔の色を塗る前に目じり、鼻筋にあらかじめうすくブルーを入れてあります。こうしていつもより赤みを増した明るい部分にやや暗いブルーを並べてやると肌の白さが際立つのです。
 次は頬、おでこ、鼻の先端など肌色基本2色より赤みのある部分に水でよく溶いた赤をうすく重ねます。真っ赤になりすぎると厚化粧のようになってしまうので、気をつけましょう。
最後にやはり赤くなりすぎないように気をつけて唇にうすく紅を塗りましょう。一般的に上唇は影で濃く、下唇は反射で明るくなります。
 というわけでかなりに肌色にこだわって仕上げてみました。いかがでしょうか。