僕は「構図」だと思っています。どんなにデッサンがうまくとも、どんなに華麗な筆さばきを覚えようが、どれほど抜群の色彩センスを発揮しようが、構図がつまらないと飾るに値する絵にはなりません。
巷の現代建築がなかなか絵にならないのは、単純化した線で構成された屋根や壁や窓が、画面を構図としてつまらなくするからだと思っています。
さてそんな訳で今日は久しぶりに風景画を描こうと岐阜県美濃市にやってきました。ここはいわゆる「重要伝統的建造物郡保存地区」。「うだつの上がる町並み」で有名です。しかもこの美濃市の名産である「美濃紙」が2014年11月27日、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。さぞかし大勢の観光客でにぎわっているだろうと思いきや、3連休の休日にもかかわらず人はまばら。やはり地方の観光産業はまだまだのようです。
美濃市駅から歩いてくると街の西南端に入り、ぐるっと反時計回りで約20分ほどで町を一周できます。到着してさっそくスケッチにかかったかというとさにあらず。
奈良の今井町を訪ねた時は、町全体が保存、修復、管理されているためか、一歩足を踏み入れた瞬間に興奮を抑え切れなかったことを覚えていますが、ここは残念ながらいまひとつ。
「美容室」などという大きな看板が堂々とかかっていたりすると隣家にどんな立派なうだつが上がっていてもしらけてしまいます。街のホームページを見ても狙いは「文化」よりも「売り上げ」のよう。〇〇家公開中、入場料〇〇円とかみやげ物、飲食店の写真入案内ばかりでこの街の歴史などほとんど書かれていません。僕のような歴史好きにはちょっと残念です。
無粋な邪魔物が多いことに加え、いい構図を作りにくい理由がもうひとつあります。それは街道の幅。通常江戸時代の道幅は4間(7.2m)だと言われていますが、ここはその2倍近くありそう。
うだつと同様火事の延焼対策なのか、交通量確保のためなのか。ただいえるのは絵を描くときに道の部分が広くなりすぎてやはり構図が取りにくい。
そうして最終的に選んだのがこの構図。理由は、画面いっぱいに軒先が連なり、町並みとして異物が無いこと。うだつの先端に鬼瓦が載っていてリズム感があること。背景に道幅の単調さをカバーする山があること云々です。
スケッチをするならここしかないと愛用の油性ペンを取り出しました。車も通る幹線道路なので、邪魔にならぬよう立ちんぼでスケッチすること約1時間。スケッチブックの大きさはサムホールとは言え、さすがに描き終えたときは手首も腰も疲労こんぱい。
とりあえず今日はここまで。「構図」の大事さがわかってもらえたでしょうか。次回は着彩編です。お楽しみに。