2016年2月29日月曜日

手描きのスケッチとパソコンで絵を描こう その2

先週は下絵となる白黒の線画の作り方を覚えました。今回はそれにフォトショップ(もちろん他のソフトでも原則は同じ)で色を塗ります。
 まず完成図をお見せしましょう。白と黒だけの線画からどうやってここまで仕上げるかわかりますか?
 一番簡単な方法はタブレットとペンでその白黒ファイルの上に筆ツールを使って直接好きな色を塗ることです。デジタルペンは筆圧を感知して太くなったり細くなったりするのでこの方法でも描けなくはありません。
 でも断言します。僕の経験ではよほどデジタルペンとデジタルカラーの使い方を熟知したプロのイラストレーターでもない限りその方法ではまず満足する作品にはなりません。
 何故かというと、まず第一に失敗が出来ません。もちろんアンドゥーで戻すことはできるのですが、回数に限界があるし、直前でなく途中段階のしかも一部分だけ戻すなどという芸当は到底できません。
 それではどうするか?そう、レイアー機能を使えば良いのです。レイアーの使い方はプロの方は色々工夫しているようですが、難しく考える必要はありません。
 基本的には遠景(空、山)の上に中景(海)、その上に近景(船)と順番に手前にあるものを置いていけばいいのです。そうすれば小さな船を塗り残して海を塗るなどという実際の水彩画では避けて通れないややこしい手間が省けるのです。
  では制作のプロセスを順を追って説明しましょう。
  まず背景として下塗りのレイアーを作ります。今回はイエローグレーで全体を塗りつぶしました。下塗りが何故いるかというと、実際の水彩絵の具と違ってコンピューターの色は鮮やかすぎるので、どうしてもアニメのような表現になってしまいます。優しい、水彩画独特の雰囲気にするためには、この下塗りにグレーを混ぜ、全体的に彩度を落としてやるといい感じなります。また特定の色を全面に塗ることで画面に統一感が出ます。もちろんこの上に重ねるレイアーは下塗りの効果を出すために全て透明度80%程度に設定することが前提です。覚えておいてください。
 次にこの背景の上に先週作った白黒の線画を重ねます。すると・・・透明度80%にすると下地の色が一気に白っぽくなってしまいます。しかも黒の線も薄く濁ってしまい綺麗ではありません。(2番目の図)
 実はここがデジタルアートに素人が挑戦する際の最初の関門なのです。したいことは下地の綺麗なイエローグレーに真っ黒な線画をのせることです。つまり線画の白いところを透明にすれば良いのです。えっ、選択ツールで白い部分を選び削除すればいい?残念ながらそれはうまくきません。何故かというと、背景は白く見えますが実は400dpiのグレー。選択したポイントからどの範囲まで明るい(暗い)グレーかを数値で設定してやる必要があり、とても短時間でその値を見つけることはできません。
 正解は「チャンネル」を使うことです。フォトショップの操作パネルの「レイアー」の横の「チャンネルのタブをクリックしてください。通常はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのウインドが表示されています。ここで右下のボタンを押して新規チャンネルを作成してください。「アルファチャンネル1」と表示されましたね。この画面に線画の画像をコピーします。さらに「チャンネルを選択範囲として読み込む」下のボタンを推し、その選択範囲を逆転し、レイアー画面に戻り、新たに「線画切り抜きレイアー」を作成します。するとそのレイアーに先ほどチャンネルから作った選択範囲がそのまま示されています。ここでその選択範囲を利用しバケツツールで黒を塗ります。これで完成。両方のレイアーを重ねたのが3番目の図です。この下塗りと線画切り抜きレイアーがあれば先週作った白黒の線画レイアーはもう削除して構いません。
  次に「空レイアー」を作ります。実は上空の深い青から水平線の明るい青に変わる大気の色はグラデーションルールを使うと一瞬で描けてしまいます。逆に手描きでこの滑らかなグラデーションを描き切るのは至難の技。後は雲を、筆、ぼかしツールを使って描き込んでください。この部分は手描きと同じ感覚です。
  次は「山レイアー」。ここで厄介なのは他のレイアーとの境界線が多いこと。手描きに比べデジタルペンの精度は劣ります。しかも細かいところは拡大して、その都度ペンサイズを設定しなければならずイライラが募ります。デジタルアートが素人に難しい第二の関門がここです。
  僕は割り切ってマグネット選択ツールを使います。線の上をなぞるだけでほぼ忠実に選択範囲を取ることができます。そこにやはりバケツツールで山の地肌色を塗り、後は山の影をやはり筆ツールとぼかしで仕上げます。
  次は「船レイアー」。船を切り抜くのが厄介だと思うでしょうが、ここでもマグネット選択ツールを使って色つけをしてゆきます。驚くほど能率が上がりますよ。
 最後に海レイアー。実はここの表現はプロの腕の見せ所。その秘密が見たいマニアックな方は次週のブログを是非お読みください。長くなったので今日はここまで。

2016年2月20日土曜日

手描きのスケッチとパソコンで絵を描こう

 「人気がいまひとつ」の僕の人物画・・・という愚痴が効いたのかどうかわかりませんが、前回の「女性の表情を描くその2」はなかなかの反響があり、ページビューもかなりの回数にのぼっています。見ていただいた方ありがとうございました。ご質問のある方は遠慮なく「メッセージ欄」へ。なるべく丁寧に返答させていただきます。
 さて今日は「手描きのスケッチにパソコンで色を塗る」がテーマです。なぜこんなテーマにしたかというと、以前絵を描く時「紙は良いものを」と書きました。しかしいかに他の趣味に比べれば安上がりであるとは言え、旅先でのちょっとしたメモ代わりのようなスケッチにまで高級紙を使うのはちょっと気が引けるでしょう。
 さらにもうひとつ、いわゆる高級紙は表面に凹凸があり、ペンが走りにくいので、旅先で本当に短時間でスケッチする時はクロッキー帳のような薄く滑りやすい物のほうがありがたいのです。
 でも旅から帰ると線だけのスケッチが物足りなくなって色を塗りたくなるのが人情というもの。しかしぺらぺらのクロッキー帳では水彩は塗れません。
 そこで考えたのが線画を元にパソコンで色をつける方法。やって見ると意外に早く、楽に、自在に塗れます。昨今は相当のお年よりもパソコンくらい扱えます。皆さんも是非チャレンジしてみてください。
 それでは早速はじめましょう。準備するのはクロッキー帳からぴりりと破り取ったスケッチ、スキャナー、お絵かきアプリのフォトショップ。
 まずはスケッチをスキャンします。モードは「グレーモード」で。
 何故かというと「モノクロ単色」だとサインペンや鉛筆の微妙な、「かすれ」、「にじみ」が読み取れません。
 また「カラーモード」にするとデータ量が多すぎてその後の色付け作業が重くなるからです。
 解像度は400dpi(dot/inchi)が適当です。インターネットを前提としたモニターで見る場合は72dpiでいいのですが印刷を前提とするときは最低360dpiと言われています。
 最初の図がスキャナーで読み取った直後のファイル。ファイル形式は本当はtifがベストですが最近のスキャナーはjpgかpdfしか扱えないものもあるようです。そのときはいったんjpgで読み取り、フォトショップで開き改めてそのままtif形式で保存しておきます。こうするとこの後のフォトショップでの操作で試行錯誤してもいつでも元に戻すことが出来ます。
 パソコンの利点はいくつもあるのですがそのうちのひとつに「自由にレイアウトできること」があります。もしスケッチブックの原画であればこの時点でレイアウトはもう決まっています。あとは色を塗るだけ。
 今回はパソコンなので余白の多い左側をちょうど良いところでカットしました。本当は海の部分が単調なのでもっと思い切ってカットしようかと思ったのですが、構図全体のバランス上このままとしました。あとでこの判断は正解だったと気づきますが・・・。

 
 






次にスキャンしたばかりの画像を加工します。というのはご覧の通り、スキャン直後の画像は全体的になんとなく白っぽく濁った感じになっていて、このままでは色を重ねても美しい画像になりません。
 具体的には僕はフォトショップの「トーンカーブ」機能を利用します。右上の図はスキャン直後のトーンカーブの状態。45度にに直線が延びています。
 画面のぼけたグレー部分を黒にしたいのでトーンカーブをスライドさせ左下の図の状態にします。



























 その時の画像が右上の図。ちょっと黒が多すぎたようですね。本来白いところまで黒くなり汚くなってしまいました。



 















そこで本来白いところは真っ白に、黒いところはかすれの微妙な部分も黒く表現できるようにスライダーを慎重に調整したトーンカーブが左上の状態。
 その時の画面が右図です。どうですか黒い線がくっきりと浮かび上がりましたね。これで下絵の加工完了です。
 次回からいよいよフォトショップでの着彩のテクニックを具体的にお伝えしたいと思います。ご期待下さい。

2016年2月7日日曜日

女性の表情を描く その2



 着色完了!。まずは顔のアップを見てみましょう。可愛らしく、女性らしい表情が描けたかなと思っています。(自画自賛!)
 この女性のポイントは第一に目。かなり気を使って描き込みました。中央の黒く濃い瞳と周囲のやや薄い部分そして一点の光。きれいな二重まぶた。ほほの反射光。
 二つ目のポイントは口元。薄めの上唇は濃い目の影でその形を強調、下唇は逆に明るめに、ピンク色を強調しました。
 あまり本人に似せるつもりは無く、魅力的に描くことだけを考えて描いたのですが、実は描き終えたとき、同じ教室の人から「そっくりですね」と言われました。写実を求めるより、特徴を強調するほうが結果的にいい意味で「似る」のかもしれません。
 前回の終了時点から一気に完成時点のポイントを解説しました。一応途中段階も掲載しておきましょう。
 例によって一通り薄く色を塗った段階です。大切なのはここで完成予想イメージをほぼ固めておくことです。
 油絵と違い水彩画は下の色を消すことが出来ません。セーターの柔らかい質感、肌の滑らかな輝きなどは、下の色を生かしつつ、上に鮮やかな色を重ねることでその効果を発揮します。
 でも逆に重ねすぎると、画面から明るさが消えてしまいます。どこまで重ねるのが良いか、これは練習して要領をつかむしかないようです。皆さんもチャレンジしてみて下さい。