この一風変わった建物の設計者は片岡安。
設計者を調べると色々面白いことがわかってきます。このブログにやはり何度も登場する辰野金吾が関西で開設した設計事務所が「辰野片岡建築事務所」。つまり彼は辰野金吾の弟子だったのです。
そして 実は以前「水都大阪」の項で取り上げた中之島の中央公会堂の設計者がその「辰野片岡建築事務所」でした。しかし中之島の公会堂とこの鹿児島の公民館では随分デザインのイメージが違っていて、何故?という素朴な疑問が湧いて来ます。
中之島公会堂の竣工が大正7年、この建物の竣工が昭和2年です。この9年の間にきっと彼は独立したのでしょう。そしてもはや親分に頼らない、自分だけのデザインを工夫したに違いありません。まさに「独立」の気負いがこの公民館に現れている気がします。
当然、「煉瓦と石のストライプ」に代表される「辰野調」のモチーフは姿を消します。そして建物の頂部や正面の窓周りに独自の装飾を施す一方、全体としてはシンプルな壁面に恣意的な窓を設ける独創的で斬新な意匠を生み出したのです。
建物が古ければ古いほど、こんなデザインの謎解きも面白くなります。
推理の結末が正しいかどうかは別として、「何故?」を問う「建築ミステリー」の魅力をあなたも味わってください。
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