2016年6月26日日曜日

白川郷・五箇山の合掌造り集落 その4


 白川郷のもうひとつの特徴は建物の配置にあります。全部の合掌造り民家がご覧のように妻側を南北に向けて整然と並んでいるのです。
 その理由はどうやら「風」のよう。村は南北に走る谷にあり、この谷に沿って強風が吹くのだという。冬は大面積の屋根を東西に向けることにより、北からの強い雪風の猛威をかわし、夏は妻側の障子を開けて屋根裏の養蚕スペースの風通しを良くするのです。
そんな機能的な理由があったとは言え、展望台から見る新緑の山をバックに三角屋根がきれいに並ぶさまは理屈を超えて壮観です。
 これぞ白川郷。

2016年6月19日日曜日

白川郷・五箇山の合掌造り集落 その3


 菅沼集落を発ち、いよいよ白川郷へ。白川郷の特徴は何といってもその広さ。世界遺産登録面積だけで46ha。その広大な村落に60棟の合掌造りが残っています。相倉、菅沼集落とはくらべものになりません。
 さて今日のスケッチ。3棟の合掌造り民家が重なり合うように建っています。でも実は人の視線で「3棟」が重なることはとてもまれなのです。
 少しでも「合掌造り集落らしい」構図とするためには画面に入る民家は多ければ多いほどいいのですが、相倉と菅沼ではどんなに歩き回っても「2棟」までしか画面に入りませんでした。つまりそれほど残っている民家の密度が低いということです。
 僕と同じことを考える写真家がいたようです。みやげ物屋に同じ構図の観光ポスターを見つけました。でもそれはたぶん僕とカメラマンの感性の鋭さを示すものではなく、「絵になる」村落の風景が白川郷でさえ減ってきたという、この村の危機を現しているのかもしれません。


2016年6月12日日曜日

白川郷・五箇山の合掌造り集落 その2


 相倉で何枚かスケッチしたあと、次の目的地、菅沼(すがぬま)集落へ。徒歩で移動する僕にとって本数が少ないとは言え、3つの世界遺産集落を結ぶ「世界遺産バス」はとてもありがたい。
 さて到着してみてびっくり。ここ菅沼集落は「小さな」と形容した相倉集落よりもさらに「ちいさい」。村の入り口に立っただけで、すべて(9棟の合掌造り)がほとんど一望できてしまうくらいです。さすがにこの規模では「共同体」と呼べる村は存在し得ないのでしょう。
 このスケッチだけを見ると「豊かな自然に囲まれた農村風景」・・・に見えますが、実は両方ともみやげ物のお店。周りには一応田畑もあるようですが、どの家屋も本業は皆、こちらのみやげ物ののよう。でも世界遺産なので、店舗として自由な改修はできないのでしょう。残念ながらあまり繁盛しているとは思えませんでした。
 この村がこれからどうなるのか、どう生きていくべきなのか、建築や町の設計をかじったことのある者としてちょっと考えさせられました。

2016年6月5日日曜日

白川郷・五箇山の合掌造り集落

 
  スペイン旅行のスケッチもまだ仕上げていないのに、今年の5月の連休、2泊3日で白川郷・五箇山の合掌造り集落を訪ねました。季節はまさに若葉のころ、快晴に恵まれ、茅葺の合掌造りを堪能するにふさわしい、最高のスケッチ旅行となりました。
 というわけでスペイン旅行記はちょっと中断、久しぶりに美しい日本の美を楽しんでもらいたいと思います。
  この「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は北から順に相倉(あいのくら)、菅沼、白川郷の3つの集落からなる世界遺産の登録名称です。共通する特徴はもちろん合掌造りの民家。梁上から棟木に向けて「人」形に、まるで合掌するように屋根材をかけるため、屋根の内部に柱(束)がありません。さらに最大60度の勾配屋根の下には2層、3層の屋根裏空間が生まれます。こうしてできた広大なスペースは山間の農地の低い生産力を補う、養蚕のための重要な作業場となったのです。そしてその仕事場の採光のために設けられた妻側の障子窓は切妻の茅葺屋根と相まって独特の外観を創り出しています。
    さて最初に訪れたのは相倉集落。僕の地元神戸からはまず特急サンダーバードで金沢へ。開通したばかりの北陸新幹線に乗り継ぎ新高岡へ、さらにそこから「世界遺産バス」で揺られること1時間。車を自分で運転しない僕にとっては、とんでもない僻地です。
  そうして訪れた相倉集落は山に囲まれた小さな村。数百メートル四方の生活圏が山の中腹から覗く視界にすっぽりと収まってしまいます。泊まったのはこの中の民家の1つ。夕食の野菜も魚も全てこの周りで採れたものだとか。自然と一体のとなった村の姿、描きとめずにはいられませんでした。