2007年12月29日土曜日

出雲大社


前回は伊勢神宮を描いたので、今回はもう一方の雄、出雲大社を描きます。
こちらは伊勢神宮と違って、本殿に近寄ることができるので、ガードマンに邪魔されることも無く、じっくりと絵を描くことができます。


さて、実に不思議な建物です。
屋根は茅葺き。柱や壁は白木。材料は日本の普通の民家と同じで親しみを覚えるはずなのに、周囲の自然から突出したその巨大さに、尋常で無い威圧感を覚えます。
本殿の高さは24M。はるか昔はもっと高かったとか。
現代でも、交通不便なこの片田舎に、ろくに建築技術も無くこんな巨大な建物を建てさせたものは、やはり「信仰心」なのでしょうか。
でも出雲大社の良さは圧倒的なその大きさだけではありません。
絵を見てください。本殿と周囲の建物、大小の屋根の重なり方とプロポーションがリズミカルでとても面白いのです。そして屋根に乗る、空を突き上げる千木が画面の絶妙のアクセントになっています。そう、純粋に絵の題材としても一級品です。


信仰心だけでなく、古代人の芸術センスにも見習うものが大いにありそうです。

2007年12月22日土曜日

伊勢神宮


先週に続いて伊勢シリーズです。
伊勢といえばもちろん伊勢神宮。
昔、教科書で見たあの偉容を描こうとしましたが、ご存知の通り本殿に一般人は近づけず絵になりませんでした。


憤慨して参道を歩いていると二本の巨木の間から小さな社が見えました。
本殿のような威容はありません。
でも深い緑に囲まれ、枝葉の間から差し込む淡い光が建物を静かに浮かびあがらせる様には神々しいものがあります。
こんな厳かな光景が、昔の人の素朴な信仰心に訴えかけるのかもしれません。


夢中でスケッチをしていると、制服をきたガードマンがやって来て「この溝から向こうに立ち入ってはいけません。すぐに戻って。」と現実に引き戻されてしまいました。
「立ち入り禁止」と書いてあったわけでもなく、むしろ構図を考えて社から少し離れる位置で描いていたのですが、彼らには関係ないようです。


伊勢神宮はすばらしい。けれど信仰の管理は最低でした。残念!

2007年12月16日日曜日

伊勢 川崎町にて


今日の絵は伊勢 川崎町の町並みです。
ガイドブックによれば、「勢田川の水運を利用し、伊勢神宮の参拝客に物資を供給する街として発展した」とのことです。

前回までに描いた京都のお寺は、言わば中国という教科書をまねて発展したのですが、この絵のような民家は人々の記憶が受け継がれて作られたものだそうです。
京都で見たのが「日本の景色」とすれば、ここで感じるのは「生まれた場所の景色」でしょうか。

僕は子供の頃、田舎の民家で暮らしたことがあります。当時僕が持っていた「民家」のイメージは「薄暗くて、寒いもの」でした。正直言って快適な印象はありません。
でも今、この川崎町を歩いていると懐かしい、暖かなものを感じます。これが人の「記憶」そのものかもしれません。

船着場から街へ路地がつながっています。
突き当たりの鉢植えが色あざやかで、この街の優しさを表しているようでした。

2007年12月9日日曜日

麦わら帽子の少女


建物の絵が続いたので、今日は人物画です。
2002年8月10日。近くの文化センターで描いた一枚です。
この日はとても暑い日で、モデルさんはそれを表現してくれたのでしょうか。涼しげな衣装と麦わら帽子が良く似合っています。

絵を描くということは、その人のイメージをつかむことかもしれません。やわらかで自然なポーズ、女性らしいピンクの服。そしてきりっとした表情。
「やさしいけれど、芯の強い女性なんだろうな」・・・絵を描き終えた僕の「確かな」感想です。

2007年12月2日日曜日

東寺 講堂と金堂


東寺には文化的に見るべき建物がたくさんあります。
せっかく来たので出来るだけたくさんスケッチをしたいと思ったのですが、五重塔、大師堂と描いたところで、かなり陽が落ちてきました。閉門までそれほど時間がありません。


そこで、手っ取り早く講堂(重文)と金堂(国宝)を一度に描くことにしました。手前が講堂、奥が金堂です。
重文と国宝をまとめて描くなんて、「取材」ならば、「いいかげん!」としかられそうですが、スケッチは構図が面白ければ、それで十分です。

ひとつひとつは重厚な屋根も二棟分連なると、そこにダイナミックで華麗なリズムが生まれます。
しかも時刻は夕暮れ。お寺の屋根と参道を夕陽が照らし始めると、ここはまさに日本の風景そのものです。

描き終えると、ちょうど閉門。
一日の終わりを描きとめた充実感を胸に、帰途につきました。